当時付き合っていた人と別れた2年前、周囲からは「すぐに次の彼氏ができるでしょ」と楽観視されていた。だが、周囲からの慰めとは裏腹、コミュ障で他人と話すのが得意ではない自分の欠点を自覚しているので「この人と別れたら、もう一生結婚できないんだろう」と思った。
予想は的中。当たり前のように、私はお一人さまである。
なぜか(バカっぽい外見と話し方のせいだろうと見当はついている。)私は、色々な男の子と遊んでおり、ひっきりなしに恋人ができるという印象を抱かれがちだ。実際は、男友達は数人だし、彼氏なんてほぼできたことがないし、大学時代には「ダメ男ホイホイ」とか呼ばれていたほど、まともな人に好かれた試しがない。
母親からも「あなたって、小さい頃から他人に嫌われている人から好かれるわよね」と私の運悪き人間関係にはお墨付き(?)をいただいている。
だからこそ、私が他の人のように結婚したいならば、自分から相手を探しに行かなければならないと思った。そこで昨年の目標を「出会いの幅を広げる」にしたのだった。
マッチングアプリについては、以前にも触れた話題であったが、別に体験談としてまとめておくことをずっと構想していた。
ただ、体験談を始める前の懸念点になっていたのが、自分の過去の恋愛模様も語らなければならない点だった。
マッチングアプリ体験談を始める前に、どうしても3年半付き合っていたA君の話をしなければならない。彼との関係性が、今の私の「こういう人と付き合いたい」という理想像にも繋がってしまっているからだ。
彼との出来事を思い返すと、私は95%の愚痴と3%の怒りが湧いてくる。他人のことを悪く言うのは気が引けるため、この話題についても書くべきか悩んだのだが、最近インスタで「おかしかった元カレとの思い出」みたいなものを読んで、心が軽くなる自分にも気がついた。彼を貶めたいという意図ではなく、当時の自分への慰めと自己分析をしたいからだと思う。
よって、今回のお話はまだマッチングアプリが登場しません(笑)
タイトル詐欺してごめんです。
マッチングアプリを始める前の思い出編!!です!!
※
Aくんとの出会いはベタなもので、大学1年生の夏季休暇前に学生団体の活動で同じ班になったことがきっかけだった。それから数回食事に行った後、花火大会で告られたという三文小説並のベタさだ。
彼と付き合う前、ほぼ「彼氏いない歴=年齢」だった自分は、恋愛に対していくつかの幻想を抱いていた。例えば、初彼と結婚をして生涯を共にしたいとか。趣味があって、話を聞いてくれて、優しければ、その他の条件は特に気にしなくても大丈夫だとか。私のことを好いてくれる人は、滅多に現れるはずがないとか(これは今でも思っている。)。
付き合う前の食事に行った段階から、当時の私は彼に対してわりと辛辣なことを書いている。
「性格はいいかもしれないが、頭が悪いです。自分にはもう少し頭がいい人が向く気がします」
本人が読んだら泣いちゃいそうだ。ここまで客観的に彼を評価できているのに、なぜ付き合ったかと言えば、私は「人間誰にでも欠点はある!それでも好きと愛があれば大丈夫!」というお花畑のプリンセス脳に侵されていたがためだ。さらに、自己肯定感の低さ。これらが元凶である。
Aくんの名誉のために書くが、3年半付き合う中で、彼には良い点もいくらかはあった。例えば、他の人からは「気持ち悪い」と称された私の軍事史好きに対して、彼は共感してくれた。それから、良くも悪くも楽観的な人間だったので、物事を深く考えがちな私が悩みを抱えている時も、根拠なく「え?そんな悩まないで良くない?」と言ってもらえていた。笑いのツボが合っていたのも良い点の一つだったと思う。
しかし、これらの良い点をかき消す問題が多々発生していたのも事実である。
あまりに多すぎて書ききれないくらいだが、誰も興味ないと思うので、3件をピックアップしてみる。
①別れる詐欺事件
大学のテストは1月末にあった。テストが終われば2か月間の春休みが待っているが、単位を落とせば留年である。留年の心配なく楽しい春休みを迎えるため、1月頃は必死に勉強する人が多かった。
私自身は、大学のテストでそこまで悩まなかった。5段階評価の「5」や「4」がいくつ取れるかという点では対策を講じたが、落単するかもという不安は小さいものだった。それは、自分は授業にきっちり出席をしており「出席点」を加算してもらえることが分かっていたからだ。
それに対して、Aくんは、ほぼ授業に出席していなかった。彼の所属していた学部は、私のいた学部と違って出席点がない科目も多かったようだが、それにしても初回と最終回しか出席しないというのは酷すぎるだろう。その空いた時間で、課外自主活動に励んでいるならばまだ理由もたつだろうが、彼の場合は睡眠とゲームだった。
この状態であるため、彼はテストが終わるたびに「今日のテストは落単かも」と落ち込んでいた。明らかに自業自得だし、私が赤の他人なら「努力すればいいやん。授業に出てへん自分が悪いやろ」と冷たく突き放すと思う。しかし、当時は、付き合って半年になりかけているくらいの恋愛期。冷たく突き放せないが、内心では怒りが湧いていた私は、こう言った。
「前期も単位落としてる言うたやん。今回も単位落としたら、別れるかも」
この時に、本気で別れておけば、私の大学生活は変わっていたはずだ。
おこがましいことは承知しているが、私は「別れるかも」と示唆することで、事態の重要性を認識し、心を入れ替えて勉強してくれることを期待したのだった。
だが、最初にも書いたとおり、Aくんはあまり頭がよろしくない。彼の反応は、私の予想を超えたものだった。逆ギレされたのだ。
「なんで、そんな簡単に『別れる』って言葉を使うの!?俺は、どんな状況であっても『別れる』って言葉を使うべきじゃないと思ってる。君が俺を立ち直らせるために言ってくれたのは分かるけど、他に言い方あるんじゃないの」
「いや、話の論点ズレてるやん。話の主題は『落単』であって『別れる』は例示でしかない、ただの付随要素やん。怒る必要ないやろ。別れたくないなら、勉強すれば良いだけやし。そこは『別れたら嫌だから勉強頑張ろう』みたいな感じで、『別れる』に重きを置かないでいいから」
……と話題の刷り代わりを説明するのだが、彼は「別れる」というワードが持つ重みにこだわって、私の意図をまったく理解してくれない。
「それは分かるよ!俺は、カップルなのに『別れる』って禁句を使ったことに怒ってるの」
「悪いんだけど、Aくんの怒る理由がさっぱり分からない。私にとっては、落単って結果は『別れる』にも発展しうる内容だと思っているから例示したわけやんか。しかも、『別れる”かも”』って推論に怒られても、私はどうすれば良かったのか分からない」
「ヨシナリの言うことは分かるから、一度冷静になろうよ。つまり、君は悪気なく『別れる』って言葉を使ったってわけでしょ。そのことが、俺にとっては悲しみと怒りが混じった気持ちになるんだよ」
「あのさ、君が悲しかったって話をしてなくて、怒ってるの私やん。例えば『学費を稼ぐためにバイトしなきゃいけなかったから授業に出席できなくて、そのせいで出席点が足りずに落単してしまう。その事情も見ずに『別れる』というのは違うんじゃないか』とかなら、私が悪いよ。だけど、Aくんが怒ってる理由、ただの感情論やんか。しかも君には反省って言葉はないの?前期に落単した時に、後期は授業もちゃんと出席するしフル単目指すって言うたやんね?それなのに、後期も落単かもとか信じられへんわ」
「そんなの分かってるよ!まだ落単してないし、人が傷ついている時に、そういうこと言うなんて酷い」
君が冷静になれと言いたかったが、私の説明を(たぶん)理解していないことに疲れて、黙ることにした。喧嘩が成り立たない相手もいるのだと知った。
最終的に彼が「お互いごめんなさいしよう」と言ったので、私は腑に落ちないまま
「『別れる』って言ってゴメン」
とAくんに謝罪した。
これを書いている今でも、やっぱり腑に落ちていない。だが、恋愛指南サイトには「喧嘩中に『あなたなんて知らない!別れる!』などと、別れの言葉はNGです」とあるので、「私も悪かったのかな」なんて、ちょっと心も痛んでいる。
この事件の後、彼は更生した……なんてことはなく、彼のGPAは卒業までずっと下がり続けて、最終的に5.00中1.80くらいだった。どれだけ試験に落ちたら、1.80なんてGPAを取れるのだろう。
②温泉事件
これは、今でも友人と集まると語り草になるほどの有名な事件である。そして実際に、友人達の間では「温泉事件」と呼ばれている(笑)
3年生の夏休みは、たくさん遊び回れる最後の時期だ。秋頃からは就活や院試で忙しくなるので、最後の思い出作りに励む人が多い。Aくんも同じ理論によって、毎週、旅行と称して出かけていた。
「公務員目指してるんやろ?予備校行かないでいいの?」
「最近、予備校行けてないんだよね〜。夏休み終わったら勉強するから!これが最後の旅行期間!」
落単王がどの口で「最後」を主張しているのか。夏休み終わっても絶対勉強やらないだろうと、私は自分に一万円を賭けていた。
私と彼は同じような進路を考えていた。それまで、学部も違うために異なることを学んできた私たちだったが、付き合って2年が経過して初めて、同じ土俵に立ったわけだ。そこで彼は、今まで目を背けていた事実を突きつけられる。
それは、自分よりも彼女側の方が、お勉強が得意かもしれないということだ。
それまで彼は、単位を落としているくせに、なぜか自分の能力に自信を持っていた。
「俺は本気でやればできると思ってるし!」
が口癖だったし、私が意見したことに対しても「もっと冷静に考えてみようか」と諭すような行動が多かった。さらに、Aくんには古風なところがあり、女性は男性に守られる存在だと考えている節もあった。そのため、
「俺が君を養うから、何かあっても大丈夫だからね!」
という発言をされることも多かった。
私がバリバリ働くという姿を、彼は想像できなかったのだ。
だが、予備校に通ってみると、数学がわからず私に教えられるような有様。彼のプライドがズタボロにされたのは、想像にかたくない。
さて、話を戻して温泉である。同じ学生団体に所属していた友人の一人が、夏休みに皆で温泉旅行をしないかと誘ってくれた。当然のようにAくんは参加に手を挙げたが、私は誘いを断った。旅行日と予備校の講義が被っていたためだ。
予備校1日くらい休んでも、と思われるかもしれない。けれども、当時の私は初めて学ぶ民法の勉強についていくのに必死で、勉強をしない日を作るのがとても怖かった。
「地方公務員だったら、秋過ぎてから本格的に勉強する人も多いし、夏はまだ自分のやりたいこと優先して大丈夫だよ」
周囲からのアドバイスに対して、私は曖昧に頷いていた。
確かに、地方公務員ならそれで良いかもしれない。学力試験よりも面接を重要視する自治体もたくさんある。
だが、私の夢は、他の公務員志望者とは違った。霞が関で働くことだった。インターンや説明会に参加をして、一番心が惹かれたのは「国を動かすこと」だったのだ。
「霞が関で働きたいから、試験も上位で合格したいので、今は勉強が大事。私は他の有名国立大学や有名私立大学の人よりも頭が良くないから、サボらずに勉強がしたいんです」
という本音を誰かに吐ければ違っていたのだろうが、周囲に霞が関志望の人もおらず、夢を口にすることができなかった。私が通っていた大学は、ほどほどの偏差値であり、霞が関で働く人は多くない。それに私は、法学部や経済学部ではないお門違いの学部に所属していた。かなり無謀な挑戦だったのだ。だからこそ、他人に「霞が関で働きたい」と言えるくらいの成績を取らなければという焦りもあった。
そうとは知らず、温泉旅行へ出かけたAくん含めた友人たち。BちゃんはAくんに対して、悪気なく、こう話しかけたらしい。
「ヨシナリちゃん、すごい勉強頑張ってるよね。試験合格したら良いよね」
ここで「そうだよね。頑張ってほしいよね」と応援してくれたのかと思いきや、Aくんの反応はこのようなものだったという。
「でもあの子はメンタル弱いから、面接で落ちちゃいそうだよね〜」
落ちることを前提に話を進める無神経さに脱帽である。
「私、Aくんには本当に腹が立って。普通は『頑張ってるよね。一緒に合格できたら良いな』とか言うものじゃないの?」
旅行後、温和な性格のBちゃんとその彼氏のCくんは、私に代わって怒り心頭だった。
「悪いこと言わんから、早くあいつと別れた方がいいで」
Cくんも同様に、別れを勧めてきた。
「深夜までずっと後輩とゲームしてたんやけど、酒あけて部屋荒らしまくって。そのくせ、片付けは自分でせえへんねん」
「そうそう。部屋の片付けは、私とか他の子が朝起きてからやってたの」
「それに、他の女の子と同じベットで手繋いで寝てたらしいで」
「それから、傷つくと悪いと思って皆黙ってるけど、ヨシナリちゃんに嘘ついて、色々遊びに行ってるし……」
なんと言うか、クズが極まっており、私は怒りよりも呆れが大きかった。
こんな男と別れてやる、と決意した。
私はAくんに連絡した。
「温泉旅行でのこと聞いたよ。私が試験に失敗すると思ってるん?」
「俺はそんなこと言ってないよ。確かに、勉強はしてても面接試験は心配だねって話はしたけど」
「それから、夜に部屋荒らして、他の子に片付けさせたらしいやん。自分が騒いだくせに、他人にやらせて平気とか信じられへんわ」
「俺がいない間に、皆が片付けてくれてただけだよ」
「まあ、もういいわ。私、別れたいんやけど」
のらりくらりと言いかわす彼に怒りを覚えながら、私は決定的な一言を突きつけた。
1年生の1月以来の禁句を聞いたAくん。さあ、どういう反応をするか!?
ここでも彼は「別れる詐欺事件」と同様に、斜め上のアクロバティックな論理飛躍を披露してくれた。
「別れた方が良いって、誰かに言われたから、そう言うんでしょ?どうせ仲良いBとかCに言われたんでしょ?なんてことを言ってくれたんだ。今からあいつらに電話して事情聴取してやる」
「誰に言われようと、私の決断なんやから関係ないやろ。犯人探しはあかんって」
「犯人探しじゃない。無関係の人が、俺たちの仲を引き裂こうとすることに怒ってるんだ」
「お願いだから、電話とか犯人探しはやめて。皆が迷惑するから」
手に負えなくなった私は、別れるという発言を撤回することにした。
「じゃあ聞くけど、本当に俺のこと嫌いになったの!?」
「いや、嫌いになってないで。好きやで。うん、好きだから」
嘘ではなかった。
私は自己肯定感が低かったので、自分を好いてくれる人を好きになってしまった。だから、ここで彼と別れたら、二度と彼氏もできないし結婚もできないのではないかという不安感があった。
妥協と言うのが正しいのかもしれない。
「ごめん。2人には悪気はなかったんやし、電話は止めてあげよう」
「分かった。電話はしないよ。犯人探しもしない」
Aくんはその場では約束してくれたが、後日、Cくんの元に「お前がヨシナリに別れを唆したらしいな」という旨の電話がかかってきたとのことである。
※
さて、はたして私とAくんはどうなるのか!?
to be continued.......