Weekly Yoshinari

Weeklyじゃなくてさーせん🙏🏻

チーズと私とマッチングアプリ②

前回はこちらです↓

チーズと私とマッチングアプリ① - Weekly Yoshinari

前回までの説明で十分かもしれませんが、別れに繋がった決定的な出来事なので、続けます。

どうぞ他人の恋愛沙汰話をお楽しみください。

 

Twitterブロック事件

温泉事件で学んだのは、別れるタイミングを見極める重要性である。これを間違えると、多方面に悪影響を及ぼしてしまう。

大方の予想が的中し、秋になってもまったく勉強をしていなかったAくん。12月になっても毎日のように飲み会に出かけていた彼に対して、私は話し合いを持ちかけた。

「卒業したら、一緒に暮らそうとか言ってたよね?公務員目指すにしても、どこの地域の何の職種受けるん?」

「まだ決めてないんだよね〜。将来のこと考えると気持ちが暗くなるから、あまりこの話はしたくないんだよ」

「いや、もう12月やんね?志望は固め始める時期じゃないん?話し合わないと一緒に暮らせないし、Aくんは遠距離なら私と別れるって言うたやんな」

「それは言ってたけど……そんな簡単に決められないよ。俺、頭悪いからさ〜。試験も全部落ちそうで怖いし」

じゃあ勉強しろよ、と誰もが突っ込むと思う。この段階で別れを告げても良かったのだが、温泉事件(「チーズと私とマッチングアプリ①」参照)の教訓を踏まえて諦めた。私にとっても、試験直前の大事な時期。ここでかき乱されても、面倒なことになるだけだ。

その代わり、私は自分の希望を伝えた。

「ほら、いつもそう言うやん。私も別れたくなかったから、Aくんが進路決めるの待っててんけど、いつまでも決めへんから、先に決めさせてもらいました。私は霞が関で働くのが夢だから、東京で勤務する予定です。将来的には海外勤務もしたいし、地方勤務もしたいと思ってます」

分不相応かとも思える私の夢を聞いたAくんは笑った。笑い出した。「マジかよww」って顔に書いていた。そして、笑っただけでは終わらなかった。

「いや、考えてみて?うちの大学から霞が関で働ける人、何人だと思ってるの?それに官僚って、すごい激務なんだぞ。君にできるの?メンタル弱いから、2か月で辞めちゃうんじゃないの?」

どこ目線だ。架空の現役官僚目線か?応援する気ないのか。

この時、私は誓った。内定をもらった当日に振ってやると。

 

私は公務員だけではなく、民間企業も見ていたため、春休みはかなり忙しかった。公務員一本のAくんも今までの遅れを取り戻すべく、勉強に励んでいたようである。

そして迎えた、試験の本番。私は午後の試験に備えて、参考書をめくりながらおにぎりを頬張っていた。

すると、同様に受験中だったAくんからLINEがきた。

「お昼ご飯、一緒に外で食べようよ〜」

「ごめん、中で食べる。参考書読んでおきたいから」

「どこの部屋で受験してるの?」

「奥の大きい部屋」

ここで返信したのが間違いだった。

彼は、私と話すために、私がいた試験室まで来たのだ。午後の試験を控えていた私は、彼に愛想を振りまく余裕もなかった。それに私は、参考書を読んでおきたいと伝えたはずだ。それなのに、なぜ来たのか。

「もうお昼食べたの?」

見れば分かるだろうという怒りを抑えて

「うん、食べたよ」

と短く答えた。

「ちょっと冷たくない?」

私の反応によって、明らかに不機嫌になる彼に気がついた。だが、私には手に負えない。なんで、試験当日という大事な日にまで、彼のご機嫌取りをしないといけないのかとしか思えなかった。

「さっきの試験どうやった?」

私の質問には答えず、彼は無言で立ち去った。

完全に怒らせたな、と私は頭を抱えた。この後、どうすれば良いのだ。「塩対応してごめんね」と謝れば良いのか?それも腑に落ちない。

午後からの試験に集中しなければならないのに、私には別の不安が浮かんでしまった。

試験後、どうやって彼をなだめようか。

 

試験は例年よりも難しく、まったく手応えがなかった。試験終了後、私はAくんにお疲れ様とLINEを送った。だが、深夜になるまで返信はなかった。

「お疲れ様。ごめんね、返信遅くなって。ちょっと頭を冷やしたくて」

「どうしたの?」

どうせ「ヨシナリのせいで」とか言うんだろうとは思いながらも、念の為質問してみる。案の定、彼からは

「昼食の時、ちょっとイラってきちゃって。でも大丈夫。もう怒ってないよ」

こっちは君に余計な気を遣ったせいで、午後の試験で失敗したんだが。

嫌味のひとつでも吐いてやろうかと思ったが、その元気もなかったので、やめておいた。それに、自分の試験の失敗は、どういう事情があろうと自分の責任でしかない。彼に責任転嫁するのは間違いだ。

 

試験の翌々日。自己採点の結果、例年の合格最低点に鑑みると、不合格になることが分かった。私はめちゃくちゃ泣いた。これ以上ないほど泣いた。

霞が関で働くこと。他の人からは馬鹿にされても、私の中ではずっと憧れの舞台だった。元々が無謀だったにせよ、それなりに努力はしてきたつもりだった。温泉旅行も行かずに頑張ってきた。でも、全部、無駄だった。

「何て言えば良いか分からないけど、ずっとヨシナリの頑張りを見てきてたから、私も悲しいよ」

「よく頑張ったよ。お疲れさま。私も第一志望の企業ダメだったし、就活ってメンタルやられるから難しいよね」

友人は私を慰めてくれた。これが普通の反応だと思うし、私が逆の立場でも、友人たちに同じ言葉をかけたと思う。

さて、ここで斜め上の反応なら、世界大会で金メダルを貰えそうなAくんの返答を見てみよう。

「もう終わっちゃったことは仕方ないだろ?元から、霞が関で勤務なんて難しかったんだし。俺の前で泣かないでよ。俺が泣かせたみたいに見えるじゃーん」

これを、肩組まれながら、しかも笑顔で言われた。

私は彼を殴っても許されたのではないかとさえ思う。

この後、私は体調を崩すのだが、Aくんは頼んでないのに看病に来た。通常なら「優しい彼ピ♡」という惚気話になるのだろうが、私は「不合格を喜んでいるんだろうな」という疑惑を拭いきれずにいたので、あまり嬉しさもなかった。

 

結局、私は自分の行きたかった会社から内定を頂いて就活を終えた。それが今の職場であり、久々にできた大学以外の世界だった。同期や先輩と話した私は感動を覚えた。

私の話が通じる!どれだけ噛み砕いて思いを伝えるかに注力しないでも、会話が成り立つ!!皆の頭がいい!!!

この感覚を手にしたら、Aくんと付き合っていられるわけがない。

当初の予定は、私が内定をもらった日に振ることだった。しかし、当時の彼はまだ公務員試験に合格できておらず、絶望感に苛まれながら毎日を過ごしていた。

「大学も卒業できないかもしれない。就職先もないかもしれない」

よく不安を漏らしていたが、私が何かをしてあげられる訳ではない。私にできる範囲を超えている状態だ。

だが、それは彼をさらに絶望の淵から突き落とす真似をしても良い理由にはならない。彼を傷つけないため、内定をもらった旨だけLINEで伝えた。

返信はなかった。既読無視の状態が続いた。そして、ふと、最近Aくんの呟きがタイムラインに流れてこないなと思い、Twitterを確認すると「ツイートは非公開です。」の表示になっていた。

彼女の内定を喜んではくれなかったようである。

 

この後、3か月を経て、ようやく私はAくんとお別れした。彼も無事に内定をもらったので、別れるには最適な時期だと判断したためだ。別れる際にも一悶着あったが、ここでは割愛する。

ただ、私が別れた報告をした時の周囲の反応は、こんな感じだった。

「おめでとう!!!やっと別れられたね!!」

「あなたには、もっと良い人がいるとずっと思っていた」

「あんな奴と付き合えるなんて、どれだけ寛大な心を持っているんだと感心していた」

父親からも、一言。

「ストーカー化されないように、帰り道は気をつけなさい」

父親にはあまり彼の話をしていなかったし、父とAくんが会ったのは2回だけだ。それなのに、意外によく人間観察しているものだと、親の偉大さを感じた。

 

ここまで色々書いたが、私が悪かった部分もたくさんある。例えば、彼の不真面目さについて「私は頑張っているのに、どうしてこの人は頑張ろうとしないの?」と自分事に置き換えてしまっていた。これは、最も反省すべき点だろう。他人には他人の行動規範がある。自分が頑張っているから相手も頑張ってほしいだなんて、自分のエゴにすぎない。彼の行動を自分の精神安定剤にしていたことについては、申し訳なく思っている。

その他の点についても同じように、なぜ怒ってしまったのかと反省することがある。思い返すと、あの時はまだ二十歳前であり、自分自身が精神的に幼かった。だから、些細なことでも苛立ってしまい、上手に流すことができなかったのだろう。

「別れる」というワードを使ったことへ彼が怒った時も、「気に触るようなことを言ってごめんね」と言えば終わったことだったはずだ。けれども、当時の私は「人が怒っている時に、単位を落とす理由じゃない部分に難癖つけてくるっておかしいだろう。私の意図は無視か」という不満が先行してしまった。温泉事件については、あまり擁護できる要素はないけど(笑)、Twitterブロック事件に関しては、試験前に「試験に集中したいから、昼休みにLINEとかも送らないでね。部屋にも来ないでね」と伝えておけば良かったのかもしれない。

何となく、私の自己中心的な考え方のせいで喧嘩に発展してしまっていた部分も多いように思うのだ。

……ということを友人に伝えると「そこまで気を回す必要なくない?」と最もな疑問を投げられる。

そのとおりだと思う。私はガサツだし頑固なので、他人の気持ちに配慮して行動することができない。他方、彼は良くも悪くも繊細だったのだ。彼の心の状態に配慮して、説明する内容やタイミングを考える必要があった。それは私にはできなかったことであり、詰まるところ価値観が違ったのだろう。

 

Aくんに感謝するべき点があるならば、私が自分の好みを明確化できたことだ。彼と付き合う前まで「優しい・趣味が合う・話を聞いてくれる」の三拍子さえ揃っていれば、辛いことも嫌な部分も乗り越えられるというユートピアに住んでいた私に、新たな価値観が備わったのである。

3年半の腐れ縁から導き出した私の希望とは、以下のとおり。

まず、真面目な人。次に、私を馬鹿にして見下さない人。そして、頭が良い人。最後に、チーズとチョコレートを食べられる人。

自分が元々考えていた「優しい」と「話を聞いてくれる」は、人間として最低限に備わっているはずの要素である。だから、敢えて相手に求める必要もない。そして、「趣味が合う」については、3年半で重要度Sから重要度Bへと降格した。

私は美術館へ行くのが好きだし、読書も好き。文章を書くのも好き。海外ドラマも欠かさず観ている。インドア派で、芸術分野が好きだ。Aくんは「歴史好き」という点では合致していたため、二人で戦跡巡りをする楽しみはあった。だが、それ以外の趣味についての共通点はなかった。

私が美術館へ出かけた報告をすると

「芸術とか何がすごいのか分からないわ〜」

とよく言っていたし、私も彼にも美術館を巡ってほしいとは望んでいなかった。スポーツ観戦なら別かもしれないが、私の趣味は一人でも十分に楽しめるものだ。わざわざ趣味につき合せる必要性もない。2人で過ごすなら、趣味以外の他愛もない話をする時間の方が圧倒的に多い。だからこそ、私の話を相手が瞬時に理解してくれて、勉強家で教養のあることの方が重要だと考えたのだ。

 

さて、ここまで友達に話したところで、だいたい聞かれる質問ピックアップコーナー!

レッツゴー!

「考察してるけど、結局、話してる内容が抽象的じゃない?真面目な人なんて条件、幅が広すぎ。世の中のほとんどの人は、真面目だよ」

私も承知しているところです。世の中のほとんどの人は真面目だって。

Aくんだって、結局、留年もせずに新卒入社しているので、世間一般で見れば「真面目な人」の枠組みになるとも思っています。それなのに、私の基準では、彼は「不真面目な人」に分類されてしまう。真剣に考えてみたところ、私の中の「真面目な人」とは「他人への感謝を忘れず、必要最低限の義務を果たせる人」や「自分を律することができる人」とも言い換えられることに気がつきました。

例えば、単位を落とすくせに授業にも真面目に出席しない部分が一番嫌いでした。だからこそ「単位を落としたら別れる」発言に繋がったのですが。なぜ単位を落としたら落ち込んだり、不機嫌になったりするにもかかわらず、授業に出ないのか不思議でたまりませんでした。彼に理由を聞いても「夜遅くまでゲームしていたから、朝起きられない」とか「昼寝しちゃった」とか。毎回同じ理由なのがまた、学習能力がないように感じられてしまっていました。

大学生にとって、単位を取るのは必要最低限のことのはず。それは、大なり小なり大学進学を支援してもらっている親への礼儀だとも思います(すべて奨学金ならば、親ではなくて将来の自分に対して、ですが。)。そんな最低限のこともできない人のことを、真面目な人とは言いたくありません。

偉そうに書いていますが、私自身もたいした器の人間ではないので、別に「4年間フル単以外は認めない」とか「自分と一緒に霞が関目指せ」なんて言うつもりはありません。けれども、限度があるだろうと思うのです……。

「頭が良い人って条件も抽象的じゃない?それって、地頭がいい人のこと?それとも、勉強が得意な人?それか、勉強は苦手だけど仕事は得意な人が良いの?」

一番良いのは、地頭が良くて、勉強が得意で、仕事もできる人ですが、自分自身がそこまでハイスペックではないので、3点セットは高望みすぎます。そこで私が求めるのは、これもまた最低限、私と会話のキャッチボールができる人です。

別に、コロナ対策に関する政府の対応の是非を述べろとまでは思いませんが、少なくとも何らかのポリシーは持っていて欲しい。そして、話題に出たとしたら、避けずに何かアクションしてほしい。意見でも、疑問点でもいいから。

「世の中の動きに意見を持ちながら生きてる人なんて少数派だから、あなたの理想が高いのでは」

私だって、専門外のこと、例えば数学やスポーツのことについては意見を述べるのは難しいです。けれども、話されたことに対して、疑問点を質問するくらいはできます。その程度でいいんです。

ただ、私が話したことに対して「難しいよ!」などと思考停止しないでほしい。

「具体的にどういう人ならいいの?イメージがわかない」

例えば、一緒に美術館へ行ったとします。美術に興味関心を持っていない相手と一緒に美術館へ行ったとします。

①相手も私のスピードに合わせて観てくれて、感想を言ってくれる場合。

ありがとうございます、大感謝です。感想言わずに無言でも、余計なことを言わない点に感謝です。

②相手が早々と出口へ行ってスマホをいじってる場合。

これは人により意見が割れそうですが、私の場合は、怒りもしないし、嫌な気にもなりません。あからさまに疲れたような態度を見せられたらちょっとはカチンとくるかもしれないですけど、たぶん「待たせちゃってごめんね。付いてきてくれてありがとう」で終わります。自分の価値観を理解してくれなくても、特段気にしないからてす。

③一緒に回ってくれたものの、裸婦像を見て「あの人、裸じゃーーん!!!」とか笑いまくる場合。

いくら一緒に回ってくれても、内心ブチ切れます。小学生か。それかサルか。無理です。

②では何も感じず、③ならば怒るのは、自分が馬鹿にされたように感じるからです。そして、精神年齢の低さを感じて、一緒にいる自分が情けなくなります。

「さすがに大人になってまで、裸婦像見て笑う人いないだろ」

そう思っていた時代が私にもありました。世の中には、某オランダ生まれの白うさぎちゃんの水着さえも「服着てないじゃん」と笑い出す馬鹿者がいることを、二十歳過ぎてから知りました。誰のこととは言いませんが。

「最後のチーズとチョコレートって何やねん」

食の好みは大事です。 

 

はい、質問はこの辺にして、次回からようやくマッチングアプリ編スタートです!!