Weekly Yoshinari

Weeklyじゃなくてさーせん🙏🏻

イーハトーブを訪ねて

小学校の国語の教科書に掲載してあった「やまなし」は、今でも幼馴染との会話でしばしば話題にあがる。

クラムボンは笑ったよ」

クラムボンは泣いたよ」

「その後どうなるっけ?」

「死んだんじゃない」

「なんで死んだんだっけ?」

「知らない」

そんな掛け合いをしてひとしきり笑うと、「結局、クラムボンって何なんだろうね」となるのだが、答えは出てこない。小学校の授業でも、クラムボンは何かという問をクラスメイトで話し合った記憶があるが、結論については覚えていない。だが、宮沢賢治が私達の子ども時代の大事な思い出に一役買っている作家であることは間違いないだろう。

宮沢賢治の大ファンというわけではないが、夢溢れる幻想的、なおかつ優しい世界観はとても好きだ。宮沢賢治関係の博物館や施設が集まっていると知った時から、岩手県はいつか行ってみたい場所の一つになった。

しかし、岩手県を含めた国内旅行より、昼寝をする週末を選び続けてはや社会人6年目。海外へ飛び立つ半年前になって、ようやく国内旅行をしようと決めたのだった。

マイナポイントの恩恵もあり、有り余るほどJR東日本のポイントがある。西日本の人間なので、通勤以外でJR東日本に用事はなく、JREポイントを使う機会がないのだ。お陰様で、今回の往復新幹線は全額ポイント払い。やったね!

それでは、最近一人でスタバへ行けるようになったヨシナリの一泊二日イーハトーブ旅行記のはじまり〜。

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大宮で新幹線に乗り換え、北上すること約2時間。新花巻駅に到着した。新花巻駅から徒歩で向かいたい先は、レストラン……なのだが、誰も私の進行方向へ歩いている人がいない。徒歩25分程度だから、レンタカーを借りる人やタクシーを使う人も多いのかもしれない。なお、当然のようにバスはほぼ走っていない。田舎あるあるの車社会だ。

みんな〜、晴れてるんだし、徒歩25分なら歩こうぜ〜。

内心で健康志向な自分に酔いながら、緩やかな坂道をてくてくしていたのだが、ここに来て絶望が訪れる。

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え?これ登るの?この階段登るの?ご冗談でしょ。

何度もGoogleマップを見返したが、間違えていなかった。

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誰もいない階段を一人で登る。弱音を吐くこともできない。悲しいな。……あっ、言い忘れてたけど、当然ながらひとりぼっち旅だよ!

運動音痴で体力テストはDしか取ったことがない私だが、なんとか370段くらいの階段を登りきることに成功。

そしてたどり着いたのがここ。

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注文の多い料理店!!!

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宮沢賢治のお話で一番好きなのは「注文の多い料理店」だ。山の奥にある洋風の料理店という設定がお気に入りで、私もこの料理店があれば入ってしまうだろうなと想像しながら、繰り返し読んだものだ。

このお店はもちろん身体にクリームを塗らずに入店でき、岩手の風を感じるようなイーハトーブ定食を食べることができる。

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定食なんて何年も食べていないので、優しさが心に染みた。ごちそうさまでした。

生きて帰ってこられる山猫軒の近くには、宮沢賢治記念館がある。

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ここにも猫がいるのが可愛い。

館内には宮沢賢治の生立ちや関心事項、思想が分かる展示がある。彼は若かりし日に農学校の教師をしていた際、生徒に自ら作った劇を上演させていたらしい。宮沢賢治書き下ろしの劇!そんな立派な脚本で演じられた生徒がとても羨ましい。今なら高額のチケット代を取れそうだ……とイーハトーブに相応しくなさそうな考えが頭をよぎった。

記念館内の説明によると、直筆原稿は保存状態があまり良くなくて修復中らしい。そのため、展示のほとんどが複製原稿だ。私の微々たる入館費も、文化振興に役立ってほしいと強く思う。

おそらく、花巻において有名なのは宮沢賢治記念館よりも宮沢賢治童話村の方だ。最近はInstagramでも岩手のオススメスポットとして見かけることがある。

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入口からすでに夢が溢れているね。宮沢賢治のテーマパークのよう。

Instagramでよく見かけるのは、童話村内の「賢治の学校」という建物。

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この木を見上げる後ろ姿とか横顔とか映える。フォトジェニックってやつだ。憧れる。

だが、悲しいかな私はぼっち旅だ。よって自撮りで誤魔化しておく。他に来場者がいなかったので、誰か入ってきたらどうしようかなって心配になりつつも、引きつったスマイルでパシャリ。ちょっと盛れた。でも盛れた報告できる相手がいないから、すぐに悲しい気持ちに襲われた。

宮沢賢治童話村は賢治の幻想的な作品を可視化したような展示が多い。建物周辺を歩くだけでも楽しい。じっくり見て回ると小一時間はかかるだろう。小さなお子さんを連れたご家族と高齢夫婦をよく見かけたので、老若男女楽しめる施設といえる。

さて、新花巻駅を後にして、次に向かうは花巻駅

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信州生活を思い出す無人駅のローカル線。

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このICカードタッチ機、久しぶりに見た。まだご健在だったのか。しかも、到着した電車の扉は手動開閉だった。地元を思い出すなぁ。

このままホテルのある盛岡駅へ行っても良いのだけれど、せっかくなら花巻駅周辺にある宮沢賢治スポットを訪れたいと思い、下車することにした。

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花巻駅からすぐの場所に、丸の内にあっても違和感がないような、何やらオシャレな洋館がある。

実はここ、林風舎という宮沢賢治の子孫が経営しているらしい雑貨屋兼カフェ。

2階にあるカフェの内装が本当に素敵で、一目見ただけで気に入った。和洋折衷のイーハトーブワールドに足を踏み入れたかのよう。上品な世界観が保たれているのだ。

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頼んだのは、桜チーズケーキとバニラティー。甘い香りに癒されて、幸せで胸がいっぱいになった。このまま私の身体が調理されても文句言えないなと思った。

実は、ステンドグラスの入口から溢れる高貴な雰囲気に圧倒され、扉の前で引き返すことも考えたのだが、こんなに美しい空間でケーキを食べられたのだから、勇気を振り絞ったかいがあった。

小休憩を挟み、盛岡へレッツゴー。今度の電車もワンマン・手動開閉ドアだった。

40分くらい座り続けて、たどり着いたのは盛岡駅。どうしても行きたかったお店があり、まだ17時だが早々と夕食がてら立ち寄った。

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盛岡駅前にある盛楼閣だ。ここの盛岡冷麺を食べてみたくて、夕方からビールと一人焼肉を堪能してきた。

盛楼閣は地元民にも人気のようで、17時と夕食にしては早めの時間帯にも関わらず、たくさんの方が焼肉を楽しんでいた。疑問なのだが、岩手県民にとって、盛岡冷麺は主食なのだろうか。〆で食べるのだろうか。いつか岩手出身の人に会えれば聞いてみたい。

私は並ばずに入れたが、会計を終えて出た時には列ができ始めており、盛楼閣の人気度を再確認した。

店内の混雑具合に遠慮して、ビール一杯しか頼まなかったので、飲み足りない。堪えきれずに途中で地ビールを購入し、ホテルに到着してから開けた。お酒大好き!!おやすみ!!!

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翌日は朝食バイキングを食べ過ぎた後、盛岡市の大通りをお散歩。たどり着いたのは、有名なここ。

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岩手銀行赤レンガ館。辰野金吾感がギラギラしている。

内装も美しい。毎日うっとりしてお仕事ができそう。

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そして、ここから徒歩5分もかからない場所に、もりおか啄木・賢治青春館というミュージアムがある。

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こちらのミュージアムは旧第九十銀行本店本館が活用されている。館内の説明によると、先ほどの岩手銀行(当時は盛岡銀行)と第九十銀行間において、どちらの銀行が先に竣工されるかという権力闘争チキンレースをやっていたらしい。結果、岩手銀行は1911年、第九十銀行は1910年に竣工されることとなった。

岩手銀行が「絶対これ、辰野金吾が作ったやろ!?」となる絢爛なデザインなのに対して、第九十銀行はちょっと素朴な感じがする。

調べたところによると、第九十銀行を設計した技師である横濱勉は当時30歳くらい。辰野金吾とは一回りくらい年齢も違う。第九十銀行はドイツ風ロマネスク様式だそうで、ヴィクトリアン・ゴシック様式(と呼ぶらしい)に影響を受けたと言われている辰野作品とは目指している雰囲気が違うようだ。

個人的には、銀行・金融業から漂う堅実なイメージには第九十銀行の意匠の方が合致していると思う。ただ、鮮やかな時間と空間を演出しているのは岩手銀行の方ではないだろうか。

最近、デザインスクールに通い始めたのだが、先生から「色々できるよりも、あなただけのデザインを見つけなさい」という指導を受けた。

今回2つの重要文化財を見て、デザインの独自性を確立する大切さを理解できたように思う。私もいつか「あれこそヨシナリデザイン!」と世の中を豊かにする作品を手がけてみたいものだ。

……宮沢賢治から話がそれた。

もりおか啄木・賢治青春館は入場料無料。「注文の多い料理店」の初版本や宮沢賢治直筆の手紙などが展示されており、お金を取ってくれても良いのになと申し訳なくなった。

大満喫できた2日間だった。日曜午後に名残惜しくもイーハトーブに別れを告げる。イーハトーブと無関係のずんだシェイクとともに新幹線へ乗り込んだ。仙台も行ったことないんだけど、一度このシェークを飲んでみたかったんだよね!笑

私には、国内旅行で行きたい場所がまだいくつもある。小樽、伊豆、徳島、金沢……。海外留学までに全て行けるか分からないが、これからも暇を見つけて東京を飛び出し、現実から離れた週末を過ごしていきたい。

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