Weekly Yoshinari

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【2023年下期】読書記録と雑感

天邪鬼な性格が災いし、流行りものを敬遠してしまう。見たり、観たり、触ったりすると、気に入ることの方が多いのに、なぜか流行の波に乗るものかと意固地になってしまうのは悪い癖だ。

 

定額読み放題サービスである「Kindle unlimited」の利点は、大流行した小説が対象タイトルに含まれていることである。

例えばHarry Potter and the Philosopher's Stone」(J.K.Rowling)から始まるハリーポッターシリーズは、原書と翻訳版がともに全巻揃っている。社会人になり英語学習を再開した頃に、ペーパーブックの「Harry Potter and the Philosopher's Stone」を購入したのだが、英語力が低くて断念してしまった苦い記憶がある。

だが、今回は違う。和英辞典がついているKindleが味方だ。分からない単語も即解決できるというメリットを最大限活かし、原書版でのハリーポッターシリーズの読破を目標に掲げた。

この挑戦は、英語力の維持には効果的かもしれないが、読書の喜びや楽しみはすり減ってしまっているように思う。

読めども読めども終わりにたどり着かず、精神的にも辛い。その上、読書の時間は有限だから、他の本を読む時間もなくなっていく。

私がやっているのは読書?それとも英語学習??

亀の歩みで2024年現在、第5巻の半分以上まで到達した。終わりが見えているようにも感じるが、第6巻と第7巻はさらに分厚くなるらしいとも聞くと、折り返し地点にも到達出来ていない可能性すらある。

読書冊数が減ったとしても、気長に頑張っていくこととしたい。

 

また、他の作品を読んだ後に気になる作者の本が対象タイトルに含まれていると、嬉しくなったりする。例えばコンビニ人間」(村田沙耶香文藝春秋も、芥川賞受賞当時は天邪鬼な性格から敬遠していた本のうちの一冊だ。30代半ばの女性がコンビニで働く話、というあらすじから、自分の目標とする生き方とはかけ離れていると判断していた本だった。

しかし、村田沙耶香さんの「殺人出産」や「生命式」や「消滅世界」などの気持ち悪い世界観(褒めています。)の中毒症状に陥った私は、「コンビニ人間」を読まなければ村田沙耶香作品を語ることなんてできないとさえ考えるようになり、ようやく読んでみることにした。コンビニを題材にしても、独特の気持ち悪い世界を構築してくださったお陰で、想像の翼を広げられた私はセ〇ンやファ〇マへ行くのも楽しむことができそうだ。

 

このように流行作品をKindle Unlimitedで楽しむようになると、対象タイトルに含まれていない流行も追ってみたくなった。

気持ちが高じて購入したのは「同志少女よ、敵を撃て」(逢坂冬馬、早川書房だ。私は1900年代の歴史が大好きだし、そもそも軍事史がやりたくて志望大学の選定をしたし、一人でロシア旅行計画を立てるくらいロシアも好きだ。そう、本作品は自分の趣味嗜好にピッタリとはまっているはず。それなのに手に取ろうとしなかったのは、流行を追いかけたくなかっただけでなくて、歴史学を大学で学んでいた自分の性格の悪いプライドみたいなものが混ざっていた。いや、この時代を舞台にした作品を好きになる一般人が本当にそんなにいるの?みたいな。

結果。もっと早く読めばよかったと後悔した。

序盤のライトノベルのような文章は少し軽いようにも思ったが、壮大な独ソ戦を舞台にした少女の成長物語は、読後感は初めて映画「シンドラーのリスト」を鑑賞した時と同じように、とても爽快なものだった。この重苦しい舞台設定でも、歴史や軍事に馴染みのない読者からの人気を勝ち取ることのできる本作と作者は尊敬に値する。また、私は以前に「戦争は女の顔をしていない」(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ、岩波書店を読んだことがあったので、世界観が繋がったことにも心が満たされた。

 

また、小説だけではなく新書であるスマホ脳」(アンデシュ・ハンセン、新潮文庫も購入してみた。こちらも、スマホの使用による脳への影響を分かりやすく書いており、とても人気の高い作品だ。何度も購入しようかと思ったのだが、人気過ぎて逆に怪しさを感じてしまい読んでいなかった本だ。

結果。もっと早く読めばよかったと後悔した。

スマホなんて小さい画面を見つめていたら身体に悪影響が出るだろうなと軽い考えしかもっていなかったのだが、現実はもっと厳しかった。人間がスマホの毒から逃れることはできないと分かり、スマホの利便性を手放せない自分は「嘘だ!!!」と叫びたい気持ちになったほどだ。

だが、思い返すと、便利なスマホに馴染めない点は多々ある。外国語の勉強にも使っているスマホだが、紙の単語集の方が覚えやすいと感じて、本を買ってしまったり。インスタグラムのおすすめ投稿に「#結婚しました」が現れて、彼氏すらいないアラサー独身女は自己嫌悪に陥ったり。一人で映画を観たり、本を読んだりする時間が一番落ち着くし、最も活用しているSNSは自分専用のジャーナリングアプリだ。ジャーナリングアプリを使ってる時でさえ、方眼ノートに気持ちを書き連ねる方が性に合うと考えることもある。

それなのに、スマホという蜜を吸いまくっている私は、もう手放すことができない。スマホから離れるためにも、読書の時間を増やさなければと強く思う。知識と世界を内側に広げていくために。読みたい本をスマホで探すという矛盾はあるのだけれど。

 

さらに、Kindle Unlimitedのお陰で、以前に読んだことのあるお気に入りの作品を再読することもできた。

社会人になり、限られた時間とお金しか読書に充てられなくなった。それならば、新しい作品にリソースを割く方が得だろうと思っていたのだが、対象タイトルに含まれているなら話は別だ。グラスホッパー」(伊坂幸太郎、角川文庫)は中学生くらいの頃に購入して、学校の図書館でも借りていたくらい何度も読み返していたが、10年も経つと内容をかなり忘れていた。

購入していなかった「マリアビートル」(伊坂幸太郎、角川文庫)なんて、新幹線で発生した殺人事件と檸檬と七尾というざっくりした記憶しか残っていなかったので、初読みの気分になった。当然、はやてとこまちが移動できないなんて覚えていなかったので、これで幼稚園児に若返れるのかな。ばぶばぶ。いや、ばぶばぶまで若返りたくないか。大人としての楽しみを味わえるくらいの時間を永遠に楽しみたいので、大学入学時の10年前くらいに戻るので十分だ。

 

1月1日という世界中の人々が幸せを願う日に地震が発生し、立て続けに旅客機と輸送機が衝突する痛ましい航空事故が発生した。航空事故が発生した際、紛糾する旧青い鳥SNSをスクロールしながら「失敗の科学」(マシュー・サイド、ディスカヴァー・トゥエンティワンを思い出した。

なぜ人間は失敗するのか?なぜ飛行機の墜落事故が発生したのか?

今回の事故後の世間の反応は、本書で例示された事故を追体験したかのようだった。

きっと本書を読んでいなかったら、私も同じような疑問と非難を行っていたことだろう。時間をかけて失敗の原因を探ることの重要性なんて考えずに。知っていたからこそ、私は誰かを傷つけないですむことができたのだと思うと、読書経験に感謝せずにはいられない。

 

私にとって、本は想像上の体験を提供してくれる大切な存在だ。2024年も誰かと心を共にできる本に出会えることを期待したい。