Weekly Yoshinari

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信州旅行記(前半)

私が信州に引越すことを伝えた時、伝えられた相手の反応は示し合わせたかのように揃っていた。「やっば、全然知らない土地だから感想わかないわ」とでも言いたげに目が泳いだ後に

「きっといいところだよ!楽しいよ!遊びに行くよ!」

と根拠もなく、応援されるのだ。人によっては「僕は最初の赴任地が長野だったんですけど、そこで奥さん見つけたんです!頑張ってください!!」やら「お酒おいしいから良かったじゃん」や「歴史好きなら住んだら楽しいかも!」という、私への慰めめいたものが付け足されていたが。

私としては、この異動は決してありがたいものではなく、友達に愚痴を吐いたり、同期に長電話したりと、周囲にも迷惑をかけてしまったと思う。本当にすみませんと、この場で勝手に謝罪をしておく。ただ、この異動がなければ作れなかった思い出もあるのは事実だ。

その一つが、異動前に友人や同期から言われていた「絶対に遊びに行くから」というもの。

「まさか、来おへんやろ~」と笑っていたが、彼らは本当に来てくれた。ヨシナリ感動。泣いていいですか。先月に3回長野観光ができたのは、優しい皆様のお陰です。

というわけで、3回分の旅行記をまとめてみたいと思う。

 

【1回目】

記念すべき一組目は、大学時代の友達2人。私は(広義の)関西出身なのだが、大学卒業と同時に関東へ出た友人は少ない。友人のほとんどは、関西に残るか地元へ帰るかのどちらかだった。私も大学入学当初は「神戸市役所とか大阪市役所とか、関西の役所に入れたら一生関西住めて転勤ないし、楽そうやんな~」と考えていたし、実際にこのような考えでの就活は珍しいものではないはずだ。「公務員試験なんて合格できそうにないし、大阪の小さい会社に入れればいいわ」と考えていたヤツが、残業1か月100時間の上、信州には飛ばされるし、さらには海外まで転勤の可能性ある安定志向皆無の現在の職種を選ぶに至ったのには、それなりに理由があるのだが、今回の信州旅行記には一片の関係もないため割愛する。

彼女たちも私と同様、「まあ、就職は関西か地元になるんちゃうんかな~」みたいな出発点から、自分のやりたいことを考えたところ、なぜか東京へ出てきてしまった少数派なので、私が東京にいた時はお互いに知り合いも少なく、1か月に1度はご飯や美術館巡りに出かけていた。

信州へ来て3か月がたち、「Go to トラベル」の広告が街中に定着した頃、私は久々に東京へ行った。

ここでは友達のことを、便宜上、AちゃんとBちゃんとする。

「9月にBちゃんと長野観光行こうって言っててんけど、休みが合わへんかったんよね」

三連休だというのに人がまばらな中華料理店にて、Aちゃんが言った。Bちゃんは3人の中では唯一のサービス業のため、土日出勤があるのだ。

「あ、だけど、ちょっと先になっていいなら、土日休みにするシフト提出にできるよ」

今後の予定を確認するためにスケジュール帳を開いたBちゃんが、あっ!と驚きの声を漏らした。

「私、来週なら土日休みだ!!」

こうして急遽、3か月ぶりの再会の1週間後に長野観光をすることが決定した。

 

私たちはペーパードライバーなので、観光に車が必須の長野めぐりは高難易度を極めた。行けるとしても、長野駅近辺、松本駅近辺、そして軽井沢近辺くらいだ。隣の席の先輩からは「車を使わずに長野観光するのは、至難の技だよ」と言われ、上司からは「隣の席の先輩に運転してもらえよ」と笑われたほどだ。

「軽井沢の美術館に行きたいって話しているんですよね」

「あそこ、車ないと無理だぞ」

「あと、滝みたいなとこもいいかなって」

「そこも車ないと無理だ」

上司と先輩からの助言によるNG観光地を避けて観光するため、私たちは軽井沢と長野駅近辺を巡ることに決めた。

 

まず向かったのは、紅葉が綺麗という雲場池

少し曇っていたが、見事に赤、橙、黄色と鮮やかなグラデーションを目にすることができた。

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秋と言えば紅葉。春の桜と秋の紅葉を見ると、和歌を詠んだ昔の貴族の気持ちが分かるような気がする。「紅葉の錦、神のまにまに」とか。人間では作れない、他の何者かが作ったかのような美しさは、確かに存在すると思う。私は和歌を詠む才能はないので、言葉で美しさを表現しきれない。せめて、もっと高性能なカメラを持っていれば、この美しさを伝えられたのかと思うと心惜しい。

軽井沢へ行こうと思うと職場の先輩に伝えた際、

「軽井沢に行ってもやることなくないですか」

と言われたが、雲場池と軽井沢銀座を歩くだけで十分に楽しめた。途中でお散歩するわんちゃんとたくさん遭遇できたので癒されたし。実家のプードルをモフモフしたくなった。

軽井沢銀座は至る所でジャムが売られている。友達はお店を見つけるたびにジャムを物色していたので、購入予定のない私も楽しめた。ジャム選びって楽しいと思いませんか。色とりどりの宝石みたいで、見ているだけで気分があがる。イチゴやオレンジのような定番品だけではなく、カボチャやクリのような秋限定のジャムもあったので、自分用に購入しても良かったかなと後から思った。

 

翌日は善光寺へ。いつか誰かと行こうと思って、一度も観光しないでいて良かった。

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「私、善光寺参り歌えんねん」

「なにそれ。聞いたことない」

Aちゃんはお寺の子なので、仏教知識が豊富である。そしてBちゃんも、大学時代にきちんと(?)仏教美術史を受講していたので、仏像の背景はある程度分かるようである。私はというと、美術史やメディア論や文化論を履修したものの、ほとんどが西洋美術史なもので、日本美術史の知識はほとんどない。日本文化論は履修したが、「日本の政治と文化構築の関係性について」という内容だった。どうも近世までの日本文化には興味が薄いのだ。だからこそ、友達がいるとありがたい。私も知識が増える。

 

善光寺で楽しかったことは、お戒壇めぐりだった。これは、右手で壁をつたい、真っ暗な回廊を一周するというものであり、中にある極楽の錠前を探り当てられると御利益があるらしい。私は信仰心の薄い人間なので、完全にアトラクション感覚(宗教関係者の皆様。本当にすみません。)だったが、きっと信仰のあつい人は、この静謐な空間を何よりの神聖なものと看做すのだと考えると、身が引き締まるようだった。私は真っ暗闇が怖かったので、前を歩くAちゃんのわずかな足音をたよりにしていた。歩くことに必死で、極楽の錠前は見つけられなかった。残念。

前述のとおり、友人は2人とも仏教芸術に関心があるため、人のまばらな史料館もじっくり見て回った。小一時間は滞在していた。自分からは足を運ばない場所なので、なかなか新鮮だった。すべての説明に英訳が書かれていたが、外国人は理解できているのだろうか。私は生い立ちや大学の専攻から、仏教よりもキリスト教の方が詳しいため、キリスト教の基礎知識がない日本人が西洋美術展を鑑賞して抱く感想が分からない。同様に、仏教知識のないアメリカ人が史料館を鑑賞して抱く感想も想像することができない。一度、キリスト教文化に疎い人とルネサンス美術の展覧会とか行くと、逆に楽しめたりするのかも。

 

この日は晴れていたので、お寺と紅葉というベストショットを撮ることができた(ちょっと加工してます。)。

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そして、野沢菜おやきもゲット。

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歩き疲れて、3人とも無言で頬張っていました。

おふたりが来てくれたから、初の信州観光を楽しめました。本当にありがとうございました。

 

【2回目】

AちゃんとBちゃんを長野駅で見送った数日後。たまたま関西に暮らす大学時代の先輩からLINEがきた。

「三連休とか暇ちゃう?長野いくよ!」

「まじですか。AちゃんとBちゃんも来てくれたんですよ」

先輩と私とAちゃんとBちゃんは、大学時代のサークルで繋がっており、お互いを知っている。

「僕はどこでも良いから、行くとこ考えておいてね。車の運転はするから」

軽井沢と善光寺以外の知識がない私には観光地が思い浮かばない。そんなわけで、再び、隣の席の先輩にお知恵を拝借することに。

「どこか車で行ける良い場所知らないですか。私と先輩はカップルじゃないんで、カップルの巣窟みたいな場所はパスで」

「えー、少年科学センターとか?」

「いや、楽しくないでしょそれ。信州じゃなくてもあるじゃないですか」

「仕方ないじゃん。小学生の遠足の時の知識しかないんだから」

まったく役立たない知識しか得られなかったので、私は先輩と会う前日まで、行く場所に迷っていた。天気予報では雨だったので、自然豊かな観光地へ行っても歩くのが大変だろうと。

 

前日に、めちゃくちゃ長電話をして深夜3時に就寝したため、眠気と闘いながら先輩に会うことになった。車の運転をしてもらうのに、助手席で寝るわけにはいかないという一心で、最寄り駅まで向かった。

「昨日の夜に到着したから、観光案内所に寄って色々話聞いてみたんよ。ロープウェイが通常は営業終了しているけど、今年はコロナの影響で営業継続してるって勧められたわ」

先輩は、数枚の観光パンフレットを手渡してきた。大学時代から、サークルのリーダーを務め、率先して旅行を企画してくれていただけある!私が自分の友達に「めっちゃいい人やねんけど、彼女おらへんねん?付き合ってみない?」と紹介しただけある!できる男は違う!!

パンフレットを物色したが、やはり一番惹かれたのは、観光案内所もおすすめのロープウェイだった。標高1,770mから眺める風景というのに憧れた。そして、幸運にも、天気予報は外れて快晴だった。

 

強風で運行見合わせかとも思われたが、無事に山頂へ到着。カップルの巣窟かと思いきや、男性グループや親子が多かった。だが、とりあえず寒い。山の上ってこんなに寒いんだと、雪降らない県出身の私はブルブルしていた。冬用コートを着こんで良かった。

私は空が好きだ。息を深く吸い込むと、冷たい空気が肺の奥まで響くような感覚も好きだ。山の上から街を見下ろすと、「空と世界はすべて繋がっているんだな」という三流ドラマのような感想も湧いてくる。三流でも、これが真実だ。繋がる世界の点になり、私はてっぺんから街を見下ろす。

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うん、幸せな景色。ありがとう自然。

 

「関西住まいの大学時代の先輩(男)が一緒に長野観光してくれた」と同期に伝えると「えー!!それ、脈ありだよーーー!!!」とキャアキャアされたが、私と先輩は決してそのような関係ではない。

先輩と書いているが、同い年のために実際は友達みたいな感じだし、私は自分の友達に紹介したくらい良い人だが(別れちゃったけど)、私の兄とお顔がそっくりなので、とてもではないが付き合えない。どのくらい似ているかというと、私の母親に先輩の写真を見せたら、盛大にお茶を吹き出したほどだ。ちなみに、なぜか父親同士の顔もそっくりなので、遠い血縁関係がある説を推している。これを伝えても、他の同期(男)からは「それ、男側は期待しているから。絶対に期待してるから」と、どこから目線か分からないが、神妙に語られた。

だが、本当にロマンスの欠片もない関係のため、

「他にどこか行きたいところある?」

「んー、私、最近パソコンの調子が悪いんで、そろそろ買いかえたいんですよねー。電気屋さん行っても良いですか?」

と、わざわざ遠くから来た先輩をアッシー君にしてしまった。ついでに、私のパソコン購入の相談にのってもらった。お陰様で、このブログを購入ほやほやのSurfaceProで作成できている。さすが、できる男は違う。

さらに、この日の夕食はカップルなら「オシャレなイタリアン」となるだろうが、私がどこも予約していなかったため、魚民に決定。せっかく来てくれたのに、観光はロープウェイのみで、後は家電量販店と魚民……。さすがに申し訳なくなってきました。この場でお詫び申し上げます。

 

こんな長時間、彼氏でもなく共通の趣味もない男と何を話していたかというと、大学時代の思い出話に加えて、愛と恋の違いだった。

愛と恋って何が違うのだろう。かなり話したが、結論は出なかった。ただ、何となく納得してもらえたのは、あくまで私の持論だが、恋愛と結婚は違うので、自分が好きになった人が結婚に向いているわけではないし、結婚に向いている人を好きになるわけではないということ。さらに、結婚に向いてそうな人が私を好きになってくれるわけでもない。だから、好き(=恋)な人ではなく、自分を幸せにしてくれる(=愛)人を探す必要があるのだと思う。加えて、自分自身も幸せにしたいと思える相手を探すとお互いがハッピー……なのかもしれないな、なんて。

先輩には好きな人がいるそうなので、頑張ってほしいです。結婚式には呼んでください。

 

さて、長くなりすぎたので、3回目の旅行記は次回に回します。

旅行記まとめで、私の週末が終わりそうです。英語(と簿記)の勉強しないと。