Weekly Yoshinari

Weeklyじゃなくてさーせん🙏🏻

信州旅行記(後半)

すっかり長くなったので、2回に分けました。後半です。

前半はこれ↓です。

信州旅行記(前半) - Weekly Yoshinari

【3回目】

私の同期はわずか7人しかおらず、現在は出向して、全国各地に散らばっている。もっとも、私以外の同期は皆、都市圏と呼ばれる地域に住んでいるので、若干の不公平感は否めない。このせいで、何となく今の職場の人からは「ヨシナリさん、長野に出向って職歴に書かれちゃうじゃん!」と言われるなど、「あまり仕事ができないから地方に回されちゃった人」と思われている節がある。仕事バリバリ有能派でないのは事実かもしれないが、ちょっと不本意な気がして悲しい。

海なし県海なし市で悲観に暮れるヨシナリのもとに、東京在住の同期からLINEがきたのは、10月上旬だった。予定が決まったのは、友達や先輩が来るよりも先だった。

「長野に遊びに行きます!!」

感動しました。本当に来てくれるなんて。

 

私の同期は皆、かなりテキパキしてしっかり者だ。行きたい場所から泊まる場所まで、スマートに決めてくれた。ホテルとレンタカーの予約もしてくれた。運転もスマートにこなしてくれた。運転中のBGM選定までやってくれた。皆、本当にすごいよ。私がやったのは、日本酒とシードルを買いそろえたくらいだ。

まずは、数週間ぶりの善光寺。Aちゃん&Bちゃんと来た時は紅葉が見頃だったが、12月も近くなったこの日は、もう赤い葉っぱは見られなかった。

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善光寺で楽しいことは、お戒壇めぐり。さあ、今度こそ極楽の錠前を見つけるぞ!!レッツ極楽浄土(?)!!並々ならぬ期待を胸に、私は今月2度目の暗闇探検隊を開始した。

「え、待って。真っ暗じゃん。何も見えないよ。え、ナニコレ」

後ろから聞こえる同期の声をBGMに、私は慎重に壁を伝った。そして、半分を超えたと感じた場所で、ガチャガチャという音を探り当てた。よし!!ミッションコンプリート!!!

 

この日の夜は、野沢温泉に宿泊した。友達と旅行なんて、卒業旅行以来だ。女の子3人+男の子1人と組み合わせでキッチン付ホテルに宿泊するーーということを他の同期に話すと「それ、3人で女子力対決やん」と笑われていたのだが、実際は男の子1人が料理を頑張ってくれた。晩ご飯は鍋に加えてリンゴのコンポートまで作ってくれたし、朝ご飯は一番早起きしてフレンチトーストを作ってくれた。同期ではなく、学校の先生みたいだった。私は料理が得意ではないので、とても羨ましい。料理できるようにならないとなあとは思うのだが、食へのこだわりが強いほうではないので、レパートリーを広げる気力に欠けているのだ。そんな私は洗い物の方が好きなので、ひたすら食器を洗っていた。

 

久々に会った同期とは、深夜2時頃まで話してしまった。せっかく温泉に来たのに、この日は入らずに終わってしまったほど。

自分は、今の職業を定年まで続けられるかというと、あまり自信がない。数年後には係長になって、その後は海外に行って、それから課長補佐になって、いつかは部長になって……という道は、世間的には評価されることが多いものだろう。私がよほどの失敗をしない限りは、一人で暮らすには申し分ない年収を得ることができる。だから、大学時代の友人や親に「いつか辞めるとは思う」と伝えると、「もったいないよ!」と止められる。けれども、申し分ない年収と引き換えに、私は残業100時間を余儀なくされる。それで本当に良いのだろうかという不安は、長時間残業が常態化している業界で働く人ならば少なからず抱えるものであるはずだ。

一方で、この不安を抱くであろうことを新卒時には承知の上で入社したのには、理由がある。私の場合は、やりたいことがあったからだ。海外で働いてみたいし、他の機関に出向してみたいし、ダイナミックな仕事をしてみたいと思った。大学入学当初は「神戸市役所とか大阪市役所とか、関西の役所に入れたら一生関西住めて転勤ないし、楽そうやんな~」と考えていたと、前回の旅行記に書いたが、私は自分の意志で「楽そうな道」へ進む選択肢を断ったのだ。

 

恋と愛が違うように、好きな仕事とやりたい仕事も違った。好きな仕事を選ぶなら、きっと舞台女優やファッション誌の編集者やハイブランドの広報を選ぶ。私は歴史や芸術、ファッションが好きだから。けれども、これらの「好き」を仕事にして自分の能力を社会に還元することを考えると、強い違和感を覚える。それらは、私が「好き」なだけであり、それにより他人が喜ぼうが喜ばまいが、私は関心を持たない。自分の中で好きならば、他人から批判されても気にしないからだ。さらに言うなら、自分が表現した「好き」で他人の心が潤ったとしても、それは社会問題を解決する根本的な方法にはなり得ないことに、私は歯がゆさを覚えた。私がやりたいのは、心の豊かさを人々に与えることではなく、社会制度を構築することだと考えたので、ファッション業界への就職をやめた。

……という話を、例えば同期や大学時代の友達にしても、彼らは笑わずに聞いてくれる。大学時代の友達は、自分の夢や目標を語ってくれる。そして、同業他社を含めた同期は、私の意見や考えに対して、数倍の意見を返してくれる。高校時代の友人からは「あ……なんかすごいね」という反応で終わったし、今の職場の人に話したところで「やっぱり、出向する人は考えてることが違うんですねー」と言われるのが目に見えている。だから私は同期が大好きで、彼らと会えたから残業多くてもこの仕事につけて良かったのかもな、なんて思ってしまうのだ。

 

今の職場の同い年の子とも、数回は飲み会をした。何となく彼らの見てる世界と私の見ている世界は違う。良くも悪くも、私と彼らの立場は違う。私が数年後の仕事内容に思いを巡らせる一方で、彼らはキャリア形成よりも結婚や出産といったライフプランを大事にする。だから、飲み会も9割がライフプランの話だ。これが私には、ちょっと物足りない。別に常に自分の意見を述べる必要はないが、たまにはもう少し哲学的な話をしないのかなという気分になる。私もライフプランは大事だし、高校時代のクラスメートの結婚報告を見かけると「私はこのままずっと、一人なのか」という漠然とした悲しみが瞳の奥にたまることもある。しかし、不思議なことに、彼らと同じ道を選んでおけば良かったとは一切思わない。最初は楽しいかもしれないが、たぶん、飽きる。

「なんだかんだ言って、たぶん、バリバリ課長補佐してるでしょ」

「いや、辞めてるかもしれへん。もうちょっと、のんびり生きる方が向いてる気がする」

「ないない。のんびり生きる方が向いてるのは、絶対ない。『ここ違うって、前に言ったやんか~。修正しといて』とかって、部下に書類返しているのが想像できる」

自分が思う私と、他の皆から見る私が違うのが面白かった。逆に、私から見た彼らと彼らが考える自分自身も違っている。私より、皆の方がテキパキ仕事をこなしていそうだけどなとか。実際に、この旅行だって、皆がさっさと予約や運転をしてくれたから成り立ったのだし。たぶん、皆、不安を持ちながらも、それぞれ例えいつか転職したとしても、頑張っていくのだろうなと思う。

 

自分たちの将来を語り、眠りについたのは深夜だったが、皆タフなので次の日は元気だった。午前中は温泉巡り。映画のロケができそう。

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実は、銭湯系が苦手だったので、初の温泉巡りだったのだが、とても楽しめた。ひたすら、熱いを連呼していた。

 

その後は荘厳な神社へ。戸隠神社。この日は奥社へ行った。

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終わりの見えない山道。私はとてつもなく運動音痴だ。この写真よりもさらに険しい道が続いていたが、私が滑って転びかけていたので、途中で引き返してくれることになった。転ばないように、介護しながら降りてくれた同期に感謝。若いはずなのに、なんかゴメン。

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この写真が一番、美しく撮れたと自画自賛しているもの。もはや別世界だ。私は雪降らない県出身なので、雪景色が見られただけで満足だった。

たぶん信州を離れても、雪景色の写真は見返すのだろうと思う。神社が白く染まる光景は、ここに来たから見られた景色だ。嫌なことがあっても、期待どおりに物事が進まなくても、自分は美しいものを美しいと思える感性まで消えるわけではないと、写真を目にすれば、これからも思い出すことができる。

 

3回の小旅行を終えて、私は以前よりも毎日が楽しくなった。友人と先輩と同期と話して、自分のスタンスを思い出したからだ。

昨年の秋頃も辛いことが続いていたが、人事課との面談で

「悩むことは多いですけど、物事は何でも自分次第でいかようにも変わるし、最後は私自身の心の持ちようだと思います」

とか自分で言っていた。一年前の自分よりも後退していてどうする。

弱音を吐いていたって、結局、誰かが変わるのを待つよりも自分が変わる方が手っ取り早い。

あまり会話のなかった職場で、知り合いのいない土地で、箱の中に閉じこもっていたような気がする。今月で、信州生活も折り返し地点。きっとこれからも続く人生のたった一年間なのだから、楽しまなければ損だ。

 

困ったときにいつも助けてくれる周囲の人に感謝しつつ、私は毎日を楽しむ努力を怠らないようにしたい。

 

おまけ。

3回とも馬肉を食べましたが、バクバク食べてくれたのは同期だけでした。

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