占いや心理テストを盲信的に崇め奉るタイプではないが、自分を客観的に分析してくれる錯覚を得るのが楽しいため、暇な時にその類をポチポチしたりする。
私は独り身かつ友達も少ないので、大概は暇なのだが、それはそれとして。
数少ない友人は優しいので、モテない女代表選手である私に対して、
「大丈夫だよ〜。すぐいい人できるよ〜。モテそうじゃ〜ん」
と根拠無く慰めて、一緒にBARで乾杯してくれる。その優しさに甘えてるからダメなのだろう。自分でも分かっている。
「可愛くもないし、頭いいわけでもないし、性格がいいわけでもないし、取り柄がないんですよ。なんて言うか、平凡。いや、そもそも、出会いがないんですよ」
と輪をかけたマイナス思考に陥りながら、日本酒を舐めているのが常なのだ。
だが、出会いを探してもいないのに文句を言うのは、愚かなのではないかと思い始めた。
そこで、友人とカフェに行った時、深夜のテンションでマッチングアプリに登録してみた。職場の上司から推された、某大手マッチングアプリである。
若い故、意外と「いいね」がつくのだが、「誰かを好きになる」という前提で異性と出会う感覚が気持ち悪くて、自分には無理だった。
身近に運命を探しちゃう、実は乙女なのだ。友達と「乙女な大人たち♥」というLINEグループを作っちゃうくらいには、乙女。自分のことを乙女だとか図々しいことを言っているところもダメなのだろう。自覚はしている。
気持ち悪さはあったものの、メッセージが来た。変に生真面目なので、返信しないと相手の気分を害するのではないかと気を揉んでしまい、やり取りを続けていると、断り切れず食事へ行く運びになった。
「会いたいです。早急でごめんなさい。僕、我慢できなくてせっかちなんです」
と文面から既に危険信号が点滅していた。ここで相手に対して「いま断ったら、誘ってくれたこの人に悪いな」とか申し訳なさを覚えるから、自分はダメなのだろう。
行先は、なんだか洒落たイタリアン(相手は探してくれなかったので、私が食べログから予約した。)。彼氏と来たかったよなぁ、などと本末転倒なことを考えつつ、自分より八歳年上の男の話に相槌をうっていた。すると、いきなり
「ヨシナリさん、モテるタイプでしょ?僕も昔はモテるタイプで〜(以下略)」
と地雷臭漂う台詞を吐かれた。
いや、モテてたらこんなアプリ使ってへんし。
マッチングアプリの話はまた別の機会に回すとして、真剣に私は「なぜモテないのか」を探るために、心理テストをしようと決めた。
最も、先ほどの話だけで、自分のダメポイントは浮彫になっているのだが。
試した心理テストは、みんな大好き、信頼と安心のハニホーだ。
さあ、ご覧ください。
ハニホーすごくない?
心をグサグサ突き刺してくる。めった刺し。今、血が吹き出している。
「つまり」の念押しが、焼印のような熱さを帯びている。
そんな念押ししないでも良いじゃないですか、ハニホー先生。
私は、何回「モテない」を連呼されれば良いのだろう。
地雷原でジャンプしている気分だ。さっき、イタリアン男の発言を「地雷臭漂う台詞」なんて表現した報いかもしれない。
あ、はい……。
キラキラ感が皆無なのは知ってましたわ……。
ショッキングピンクに憧れてるけど、暗闇で揺れる蝋燭を見つめて、心を落ち着けちゃう感じの暗い性格です……。
来ました。「凡庸」。
自覚してます。魅力的じゃないですよね。ドキドキさせる要素ないですよね。
ぶっ刺した心の傷を抉っていってるようである。
見事なまでの低空飛行。
私の学生時代の恋愛遍歴とぴったり一致している所に、驚きと虚しさを感じさせる。
でもこれ、40歳の部分のことであっても、モテ期って言わないですよね。ハニホー先生。
いや、知ってた。
戦力外通告されている。
そして、一番心を貫いたのは、これである。
はい、どうも、観察するような態度になるビビリ・チキンです。
当たり前のことを言うな、ハニホー。自信あったら、モテてるに決まっているだろう。
このように私はモテない。
だからと言って、自分から誰かを誘うこともできない。
あ、これは結婚できないやつだ。
と20代で気がついてしまった私は、自分の将来に思いを巡らせるようになった。
幸い、年収はそこら辺の男性と同じくらいあるはずなので、将来的にもお金には困らないだろう。
だが、そこまで物欲に塗れているわけでもない。可愛い服は欲しいが、買ったところで置き場に困る。それに、一週間は七日しかないのだ。そんなに服があっても着る時間がない。
趣味は読書と海外ドラマの視聴であり、これまたお金がかからない。本で壁を埋めつくしたいが、これも収納場所の問題が浮上する。
食べることは好きだが、サラダと豆腐とヨーグルトが好きな人間なので、食費もかからない。
ハニホー先生によると、私は一人で生きていく可能性が高いのに、これでは何とも虚しい。
どうすればいいだろうか、と考えたところ、私はタワーマンションに住めば大抵のことは解決するのではないかと思いついた。
街を見下ろすことができ、収納スペースがたくさんあり、空を見渡すことができ、海外の大学の図書館のように本で壁を埋めつくせる部屋。どこかにあるはずだ。
何だか成金感があるが、どうせ結婚しないなら遺産相続の必要もないのだし、と理由をつけてみる。
けれども、タワーマンションに女一人で暮らしていると、ふと虚しくなったりするのだろうか。
一人だと部屋は広すぎるだろうし。風景も見飽きる可能性が高い。周囲の成功者ぽいブルジョワジーな方々と、自分を比較してしまうこともあるかもしれない。
それでも、タワーマンションには住んでみたい……。優雅な暮らしへの憧れは捨てられない。
あ、そうか。
私は手をぽんと打った。
誰かと一緒に暮らせば良いのだ。ルームシェア。
そのために、誰かを探さなければならない。しかし私はモテないし、自分からも誘うことができない。
さあ、どうするものか。
数少ない友人は優しいので、こんなモテない女代表選手である私を
「大丈夫だよ〜。すぐいい人できるよ〜。モテそうじゃ〜ん」
と根拠無く慰めて、日本酒をついでくれる。この優しさに甘えてるからダメなのだろう。自分でも分かっている。
........あれ、デジャブじゃん。
こうして、また振り出しに戻るのであった。