Weekly Yoshinari

Weeklyじゃなくてさーせん🙏🏻

ティファニーから朝食を

オードリー・ヘプバーンマリリン・モンローのどちらが好きか、という問いは、いつの時代でも大論争を巻き起こすと思う。

かくいう自分も、どちらが好きかは決めがたい。

私のiPhoneケースはマリリン・モンローだ。

よく

「ツッコミ待ちなの?」

と言われるが、別にそういう訳ではない。ただ好きなだけだ。しかし、CHANELのNo.5を纏って眠るほど、マリリン・モンロー派ではない。同じCHANELなら、cocoの方が好きだし。

ファッションという観点から見るなら、絶対的に、オードリー・ヘプバーンの方が好きだ。上品な色合いのドレスを着こなせるのは、彼女しかいない。現代でも「時代の最先端」なファッションには心から憧れる。

 

それでは、ティファニーと言われれば、どちらが思い浮かぶだろうか。

恐らく、大抵の人は、「ティファニーで朝食を」からオードリー・ヘプバーンを連想するのではないだろうか。自分は、「Diamonds are a girl's best friend」で「Tiffany's!! Cartier!!」と高らかに歌うマリリン・モンローの方が印象強いので、人それぞれかもしれないが。

しかし、この2人よりもティファニーからイメージするものがある。

朝食である。

 

私は、朝食をとらなくても平気な方だ。食べても、6個入の小さなロールパンを2個だけとか、その程度。ひどい時は、一杯の豆乳とか。大学生の頃、朝から試験勉強をしていた時は、毎朝、豚汁を作ったりしていたのだが、今はそんな気力もない。豚汁を作る時間があるなら、睡眠に充てたい。

平日でこれなら、休日は尚更だ。朝ごはんの時間は夢の中にいる。きちんと食べるのは夜ごはんくらいなものだ。

休日の夜ごはんは、洋画とともに過ごす。お洒落で、可愛い、毒のあるミュージカル映画か、ナチス・ドイツが舞台の戦争映画のどちらかが多い。

三連休も例に漏れず、私はHuluで洋画を物色していた。「明日から仕事だ。つまらない毎日の始まりだ」とヨーグルトを吸いながら。ナチス系の映画は粗方見終えているので、選択肢はお洒落映画の一択だ。暗い気持ちだった私が見つけたのは、「ティファニーで朝食を」だった。

以前に「ローマの休日」で挫折した経験があるので、「ティファニーで朝食を」は観たことがなかった。でも、たまには良いかもしれない。

なんと言っても、お洒落だ。

まず初めに登場するのは、有名なあのシーン。

オードリー・ヘプバーン演じるホリーが、ティファニーのショーウィンドウを覗きながら、クロワッサンをかじる、あのシーンだ。

これだ、と私の直感が告げた。

このつまらない毎日を変える方法がある。

私は、朝ごはんを食べればいいのだ。それも、とびっきりお洒落なカフェで。

即決力だけは一人前なので、私は次の日に、朝ごはんを食べに行くことに決めた。

 

6時20分に目覚ましを止めた私は、朝ごはんの楽しみで飛び起きた……わけではない。

――いや、眠いわ。朝ごはん抜いたら、あと1時間20分も寝られるじゃん。

毒づきながら、二度目の眠りにおちかけた。

だが、決めたことをやらないのは嫌いだ。私は昨日の自分とオードリー・ヘプバーンに期待をして、口をへの字に曲げて、身体を起こした。何も口にしたい気持ちではなかった。

いつもよりも乗車率の高い電車に揺られながら、こんな無理する必要はあるのだろうか、と虚しくなってきた。いっそ、近所の松屋で済ませれば良かったか。いや、それだとお洒落ではない。私が求めているのは、朝食ではないのだ。朝ごはんなのだ。

私が降り立ったのは、この街で一番好きな駅前。人通りの少ない大通りを、黒色のワンピースを翻して、歩く。朝日で白く輝く大きな駅が、向こうに佇んでいた。

朝の街も、ステキじゃないですか。

虚しさをしぼませて、私はカフェへと向かう。

駅からほど近いそのお店は、思っていたよりも空いていた。朝から活動する人は、多いようで少ないらしい。

私の前に並んでいたのは、欧米人男性3人組だった。上品系の女性が利用する店かと思っていたので、少し意外だった。くるりと店内を見渡し、男性率が高いことに気がつく。campusを広げている人、Macに文字を打ち込む人。色々だ。

私も、温かな紅茶とフルーツで彩られたヨーグルトを受け取り、端っこの席におさまった。

時間の流れが、違う気がする。いつもなら、これから電車に乗ろうとしているくらいだ。私が夢の中で遊んでいるとき、もう活動している人がいるのだ。そんな当たり前の現実が向き合ってくる。

二つ隣の席の女性は、少しだけ微笑みながら、参考書を広げていた。資格試験の勉強だろうか。すごいな、と思った。自分よりも一回り上に見える女性は、朝から自分と向き合い、自分の道を歩いているのだ。

 

一人の朝。世界の端っこから、私は、この場でやりたいことを考える。

ここで、「グレート・ギャツビー」を読みたい。イタリア語を勉強したい。ファッション展の図録をめくったりするのも良いかもしれない。

私は、現実と常に向き合わないといけない今の仕事が向いていないのだろうな、と思う。

だが、逃げないために、私は今ここにいる。自分の道を歩くための第一歩が、この朝ごはんだ。

自分の時間は、この瞬間に縫い付けられている。

やりたいことも、浮かんで来る。それを一つ一つ叶えていくために、朝ごはんはある。

 

私は、ヨーグルトと、ベリーソースを混ぜた。マーブル状態になったそれを、乾いたバナナに絡ませる。

口の中で、カリカリと音を立てて、バナナは粉になった。

甘いのに、酸っぱさが、鼻にまでのぼる。

 

いつもよりも早く、私の活動は始まった。

おはようございます。

今日が、幕を開ける。

 

The most important thing is to enjoy your life – to be happy – it’s all that matters.

―Audrey Hepburn

 

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