Weekly Yoshinari

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【決行】カンボジア逃亡計画① (ドタバタ到着編)

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yoshinari.hatenablog.com

有給を2時間だけ取得し、夕方に終業した私は遅ればせながらパッキングを開始した。深夜便の搭乗だから余裕があるだろうと、旅行当日ギリギリまで仕事をする社畜精神。我ながらアッパレだが、「エコノミー症候群で死んだらどうしよう」とか「トランジットのスワンナプーム国際空港(タイ・バンコク)で道に迷って乗り遅れたらどうしよう」とか「Grabが使えず、プノンペン市内の交通手段がなくなったらどうしよう」とか、数多の不安で頭がいっぱいになり、腹痛が始まった。燃えるように胃腸が痛く、潔く休めば良かったと初っ端から後悔した。

私はネジが3本くらい脳内から抜けているので、旅行ではだいたい忘れ物をする。忘れ物をすること前提で物事を進めているので、電車の中では「あー、今回の忘れ物はメガネかぁ」とか「今回はイヤホンだったかぁ」とか心の中で今回の忘れ物ゲームをして遊んでいるほどだ。

だが、日本だとゲーム化して楽しめるが、今回は海外。しかも、日本のような先進国ではない東南アジアだ。今回ばかりは忘れ物をしないよう、何度もスーツケースの中身を確かめるが、毎回忘れ物をする習性なので、不安が尽きない。

どれだけ確かめても忘れ物をするのだから、気をつけようもないのだ。完璧な用意は諦めた。「お金とスマホとパスポートさえ忘れなければ何とかなる」と自分に言い聞かせ、21時を回った頃に自宅を発った。夜中に空いている方の路線に乗るという非日常感で高揚感に浸り……とは性格的にならず、いたって冷静に今後の流れを確認していた。

旅の楽しみより、不安の方が勝る。

なんでこんな大それたこと始めてしまったんやろ。カンボジア行かんでええんちゃうかな。深夜に普段と逆方向の電車に乗るだけで、非日常に逃げるミッションクリアできた気するし私は満足やわ……という弱気な気持ちが心の中ににょきにょき生えてきたものの、動き出したら止まるわけにはいかない。

※今後も「不安」や「心配」の表現が多発しますが、私は元々かなり心配性かつ豆腐メンタルの持ち主です。皆様の中には「そんなちっちゃいことで悩んでんじゃねえ」とイライラして画面を殴り出したくなる場面もあるかと思いますが、温かく見守ってください。

 

都内の某空港に到着したのが、出発の3時間前。チェックインカウンターは空いており、荷物の預け入れは一瞬で終了した。

私は今回、バンコクプノンペン行の航空機に乗り換える予定だ。この場合、荷物はどこでピックアップするのだろう。海外旅行の経験が少ないので、こんな初歩的なことすら分からない。プノンペンでのピックアップのみであって欲しいと願いつつ、グランドスタッフに尋ねてみることにした。

「この荷物って、プノンペンでピックアップするだけですか?バンコクで預け直しが必要でしょうか?」

「タグにはプノンペンも書いてありますけど、一度、バンコクでピックアップしてください」

残念!カンボジアへたどり着くまでのミッションが増えた。当然、海外一人旅初心者の私はイレギュラーに慣れていない。

ピックアップするということは、タイでも入国審査と出国審査が必要ってこと?

プノンペン到着時刻から搭乗開始時刻まで、2時間ないけど大丈夫なの?(方向音痴発揮する可能性90%だから)間に合わなくない!?

疑問を解消するために質問したはずなのに、疑問と不安が倍になってリバウンドしてきた。さっそく前途多難な雰囲気が漂っているぞ。自宅に引き返せればどれだけ安全だろう。それか、友人を誘って来ていれば、不安感も少しは和らいだだろうに。

そんな後悔が湧いたが(豆腐メンタルだから、落ち込むのが早いね!まだ自宅を出てから2時間もたっていないよ!笑)、一人旅を決めたのは自分だ。頼る人が近くにいないことなんて承知の上だ。

大丈夫、何とかなる。死ぬわけじゃないんだし。

気を紛らわすために、深夜の空港を探検することにした。空港も廃墟も好きな私にとって、深夜の空港は好きと好きを合成したような場所だ。閉店後のお店がずらりと並んだ光景はショッピングモールを独り占めしたようで、ぼーっと座っているだけで満足感を得られた。この廃墟感を味わえるのだけでお釣りが来るほど、一人旅は最高だ。

そんなこんなでお店を物色したり、動画を観たり、Duolingoをポチポチしたりして時間をやり過ごし、搭乗時刻を迎えた。

しばしのお別れ、ばいばい日本!!

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現地時間で朝6時になった頃、スワンナプーム国際空港に到着した。はじめましてタイ。乳児の鳴き声がうるさかったので、睡眠不足だった。寝ぼけ眼をこすりながら、私はこれから、入国と荷物の預け入れと出国をこなさなければならない。

早朝だからだろうか。空港内はとても空いており、サクサクと入国が終わって荷物のレーンまで到着した。しかし、一向に私の荷物が流れてこない。最初はあんなに多くの人がいたのに、あら不思議。気がついたら、レーンの周りにいるのは私だけだった。

さっそくスーツケースを失くされるトラブル発生したの!?行方不明!?

慌てふためき、近くにいた係員らしき女性に、預入荷物の控えを見せながら急いで確認する。

「すみません、東京の空港では、ここで受け取るようにと言われたのですが……」

「ここは不要ですね。プノンペンに直接到着しますよ!」

な、なんだと。聞いていた話と違うではないか。

「あ、じゃあ、私はこれからまたカウンターで手続きをする必要があるってことですよね……?」

「イエス!!4階ですよ!」

指を4本立てながら、輝く笑顔で係員の女性が説明してくれた。

なんと無駄足。トランジット時間が短いので、せっかくタイに入国しているのに街中へ繰り出すこともできない。

一体私は何のためにタイへ入国したのだろう。そして、なぜあれだけ出発前に不安感にさいなまれる必要があったのだろう。

アニメなら、ガックリという効果音がつきそうな状況だが、愚痴や文句を言う相手もいないので、心の中で「がっかり」と呟くにとどめる。

私は再度チェックインカウンターへ赴き、滞在30分程度でタイからおさらばした。

ただの空港一周チャレンジした人間が誕生した瞬間だった。

 

気を取り直して、目指すはプノンペン

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この不安になってくる旧式のボロボロ機に乗り、本日2回目の朝食をとる。東京からバンコク行のメニューも、バンコクからプノンペン行のメニューもオムレツだったが、東京からバンコク行の方が美味しかった。

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タイからカンボジアはとても近い。搭乗から約一時間半。うつろうつろしながら、プノンペンに到着した。

初めての東南アジア。初めてのカンボジア。初めてのひとり旅。

本当に、自力でここまで来たんだ。

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熱気のある外の空気が日本とは違う。異世界だった。

飛行機から降りただけで、すでに胸に熱いものが込み上げてきたが、感動するのはまだ早い。入国すらしていないのだから。

観光にあたり最初にやるべきことは、アライバルビザの取得だ。30ドルかかる。

カンボジア入国の際はビザが必須だが、①事前に大使館へ申請、②事前にeVISAを申請、③到着後にアライバルビザを申請の3種類の方法がある。ネットに転がる情報を見ても、アライバルビザが最も効率的だとされているが、私も完全に同意だ。わずか5分ほどで取得できる。

行く前は「そうは言っても、現地でビザ申請の方法が分からなかったら入国できないかもしれない」という不安があったが、他にもキョロキョロしている外国人観光客が同じ飛行機に乗っているし、空港職員も「ニード、アライバルビザ?」と聞いてくれる。私の心配は杞憂に終わった。

アライバルビザを取得後に待ち受けているのは、カンボジアの入国審査だ。レーンはガラガラ。首都なのにこんなに観光客が少なくて大丈夫だろうかと不安になってくるほどだった。そもそもプノンペン国際空港自体、首都の空港と思えないほど小さい。

「Vacation?」

「Yes, vacation.」

「OK, Have a nice trip.」

ドンくさい私は質問よりも指紋採取に時間がかかったが、それでも合計3分程度だろう。ちなみに係員の女性が指紋採取に手こずりすぎていた私の手を掴んで機械に押し付けてくれた。ありがとう、たぶん同世代の女の子。
カンボジアは歴史的背景から若い人が多いのだが、みんなフレンドリーだ。わちゃわちゃ話していた若手の税関職員達が、「こっちだよ〜」と私が通る時だけいきなり真面目に案内してきた感じ。完全にZ世代が集結している自分の職場と同じ空気感で親近感が沸いた。こちらの人達も「ロマンス詐欺に気をつけろ!」「いや、ひったくりに遭わないように!」なんて会話をしているのだろうか。

これから荷物を預けるために、ホテルへ向かう。事前に空港からホテルへの送迎サービスを予約していたのだが、到着ロビーも人がまばらで、私の名前を掲げた運転手さんとは楽々と落ち合うことができた。

カンボジアは初めて?一人で来たの?」

「イエス。一人で来たし、これが初めての一人海外旅行だから、ちょっと緊張してるんですよね」

「そうなんだ。今日は40度とかだから、気をつけてね。僕らには普通だけどね」

こうして、プノンペン着陸から1時間も経たないうちに、ホテルに荷物を預けることに成功した。11:30頃にホテルに到着してお昼ご飯を食べに行く……という想定は、見事に崩れた形だ。最初の不安はなんのその、さくさくと物事が進みすぎて、まだ10:30にもなっていない。

ホテル前の狭い道に立っただけでも、日本とはまったく違う文化圏に来たのが分かる。

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異国で一人きりという状況に、水の中で息をして泡がぽこぽこ浮いてくるように、好奇心と不安に溺れてしまいそうだった。

さあ、頼れる人はいない。街へ繰り出そう。

(続く)