Weekly Yoshinari

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『The Bold Type』を語りたい

以前から、海外ドラマを視聴するのが大好きだと書いていますが、自分の好きな作品についてあまり語ったことがないことに気がつきました。

そこで、今回はたぶんヨシナリ家のBGMとも言えるほど繰り返して見ている、大好きな『The Bold Type』について語りたいと思います。

 

この作品は、現在、日本においては『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち』という邦題で、Amazon primeなどの動画配信サービスで無料公開されています。海外ドラマは英語で見るのがモットーである私は、邦題よりも原題の『The Bold Type』に親しみがあるので、こちらを使用させてください。と言うか、なぜ日本は海外作品に変な邦題をつけちゃうのか。

 

物語の主人公になるのは、ニューヨークにあるファッション誌『スカーレット』の編集部で働く、25歳の女の子3人組。この舞台設定だけで、多くの視聴者のハートを掴みそうです。ファッションが好きな私もその一人です(笑)

この作品のすごさは、軸足をファッションではなく、社会問題に置いていること。ファッション誌の編集部が舞台というと、映画『プラダを着た悪魔』を連想しがちですが、恋愛やファッションの話題はもちろん、LGBTQや移民問題、若者の政治参加などを扱っているため、男性でも参考になる内容かと思います。私自身は、男友達には「舞台設定を気にしないなら」という条件付きで紹介しています。

日本においては、邦題が視聴者を広める足枷になってしまっているような気もします。男性にもぜひ観て欲しい内容なのに、キラキラニューヨーク生活憧れ女子以外は見向きしなさそうな邦題ですし、キラキラニューヨーク生活憧れ女子よりも社会派ドラマが好きな方に向くと思うのに……。

 

2017年から放映されているこの作品は、今年5月からアメリカ本国で放送されているファイナルシーズン(シーズン5)をもって、惜しまれつつも完結予定です。

英語が得意な方は、私のヘタクソな説明よりも下記のBuzzFeedの記事を参照いただいた方が良いかと思います。私が言いたいことは、ほぼ全て網羅しています。英文にはなりますが、下記BuzzFeedの記事のように「『The Bold Type』を見るべき〇つの理由」というタイトルの記事は多く転がっているので、興味がある方はぜひ調べてみてください。

ちなみに、2021年現在、日本語版Wikiは驚くほど貧相な内容なので、あまり参考にはなりません。

BuzzFeed" 'The Bold Type' Is Coming Back For Its Final Season — Here’s Why You Should Watch It"      

https://www.buzzfeed.com/aliceporter/the-bold-type-reasons-to-watch

 

内容を語る前に、まずは物語の中心になる3人の女の子の紹介です。

 

〇ジェーン・スローン

『スカーレット』のライター。

政治やフェミニズムに興味があり、自身の経験を踏まえて社会問題を提起するような記事を執筆する『スカーレット』の新進気鋭のライター。同誌編集長のジャクリーン・カーライルに憧れている。幼い頃に母親を乳がんで亡くしており、自身も変異型遺伝子を持っている。病気のことや、恋愛のことで悩みながら前に進んでいく。3人の中では冷静な方かも。

 

〇サットン・ブレイディ

『スカーレット』のファッション部門スタイリスト・アシスタント。

編集アシスタントから、憧れだったファッション部門アシスタントの席をもぎ取る努力家。田舎の母子家庭で育ったが、自身を気にかけずに育てた母親との関係はあまり良くない。『スカーレット』を出版するサフォード社の顧問弁護士である、年上のリチャード・ハンターと交際中。努力家だが、恋愛遍歴は自由奔放そう。一番モテているのでは。

 

〇キャット・エディソン

『スカーレット』のSNS部門責任者。

黒人でバイ・セクシャル。ジェーンと同じく、政治やフェミニズムに興味がある。3人の中では最も出世しているバリキャリ派(精神科医の娘で、就職もコネだったらしい。)。

物語開始時点では、男性との交際経験のみだったが、中東出身のレズビアンのカメラマンであるアディーナとの出会いにより、本当の自分に気がつく。思い切りの良い性格で、誰にも物怖じせずに意見を述べる。

 

このように三者三様の性格ですが、ポイントは「誰もがコンプレックスを持っている」ということかと思います。このポイントが、おそらく彼女たちの働く『スカーレット』の「ありのままの自分を愛すること」という編集コンセプトと思われる部分にも繋がっているからです。

邦題からは、オシャレなNYライフを満喫する若い女の子たちを想像します。流行のファッションに身を包んだ彼女たちが自分の横を通ると、私たちは一見「この子達はいつも幸せなのだろうな」という先入観を抱いてしまうかもしれません。

けれども、彼女たちはそれぞれ悩みを持っており、時には自分の力の及ばない「女性」という部分で問題にぶつかります。彼女たちは決して、邦題から想像するようなキラキラした毎日を送っているわけではない。自分の悩みを乗り越えるために、友人と支え合いながら奮闘しているのです。

ちなみに私の推しはサットン。彼氏にさえ甘えるのが苦手な部分や、我慢を重ねてきてもずっと頑張る姿には勇気をもらえます。

 

それでは以下、個人的に大好きな点です。

 

①ニューヨーク生活に夢を抱ける

度々登場するニューヨークの風景。もう、これだけで田舎出身の私の目には、キラキラ輝いて見えます。しかし、実際のロケ地はニューヨークではないとか。

 

②会話の作り込み方がすごい

これは本当に上手だなと思うのですが、3人の会話が嘘くさくないのです。街中を歩いている女子3人組を観察していたのかと思うほど。

例えば、ジェーンは『ピンストライプ』誌のライターであるライアンと恋仲になります。この時、3人の会話では「ライアン」ではなくて「ピンストライプ」と呼ぶんですよね。しかも、ジェーンもスマホの連絡先を「ピンストライプ」で登録している(笑)

「ねね!ピンストライプからの連絡は!?」「いや、あの人とはそんな関係じゃないから」みたいな会話!!あるある!!

きっと若い女の子なら共感してもらえるポイントが詰まっています。友達の彼氏にあだ名つけるのって、万国共通なんですね……(笑)

 

③登場人物が魅力的

上述した3人以外にも魅力的な人物がたくさん登場します。特に注目されるのは、ご紹介したBuzzFeed記事にも書かれている、『スカーレット』の編集長であるジャクリーン・カーライル。有名女性誌を率いる彼女は、私生活では二人の男の子を育てるお母さんです。公私ともに充実しているように見える彼女も、やはり私たちと同じように悩みを抱えています。

また、登場人物は皆オシャレ!!流行を取り入れたファッションは、とても参考になります。また、ジェーン達は、悩み事を相談し合うために、会社の様々な衣装が管理されている「ファッションクローゼット」を使うのですが、ここではファッション好きにはたまらないほど色鮮やかなドレスが並んでいるのを目にできます。

私は社会人一年目の出勤前、ほぼ毎朝この作品を観ていました。そのせいで、オンボロビルの弊社に到着するたびに「ここが『スカーレット』だったらな」とか夢想し、同期には「私も、もっとオシャレな空間で雰囲気で働きたい」と愚痴を言う始末。日本では無理でしょう(笑)

 

④常に進化を続けている

ここに来て、ちょっと落とすようなことを書きますが、この作品には時折「ご都合主義」も見られます。例えば、移民問題について主人公たちは「少数派の権利を保持すべき」というスタンスです。いわば民主党寄りなのです。

日本人の私は彼女たちの主張に対して賛成・反対を表明できませんが、トランプの移民政策を支持する方もアメリカには一定数いるはずです。社会問題を扱いつつ、反共和党的な価値観が強く押し出されているのは、作品のジレンマだと考えられます(持論ですが、表現の自由が認められている国においては、政権を支持する論調よりも反対する論調の方が表現をしやすいのではないかと思います。そもそもジャーナリズムの発展に大きく関わったのは「政権批判」なわけなので。)。

けれども、シーズンが進むと「共和党支持の弁護士」など、主人公達と対立する思想をもった人物が物語の端々に登場します。

世の中には、正反対の意見を持つ人がいます。様々な意見を取り上げようとするこの試みは、物語をより深いものへと発展させる役割を担っているとともに、作品の「自分自身を愛すること」という普遍のテーマを具現化しているものだと思います。

 

⑤英語の勉強になる

これはBuzzFeed記事には絶対に書かれない、日本人的視点です(笑)

社会問題から日常会話までふんだんに扱われているため、リスニング力はある程度向上できると思います。また、彼女たちの意見の述べ方も参考になります。仲良しですが、毎回何らかのことを言い合っている彼女たち。日本との文化の違いを感じさせてくれます。

ただ残念なのは、英語字幕には対応していないこと。英文スクリプトを探してみましたが、一部しか見つかりませんでした。

 

⑥自分を愛すること

BuzzFeed記事には「The show is always sex and body-positive.」とありますが、和訳するなら「『性』と『ありのまま自分を愛する』こと」になるでしょうか。「性別」と訳すと「ジェンダー」との違いが分からなくなるので迷ったのですが、日本語で「セックス」と言うといかがわしい雰囲気になりがちなので……。「ボディポジティブ」も日本ではあまり一般的な概念ではない気がしたので、そのままの意味を持ってきました。

特にポディポジティブは、この作品における最重要テーマだと理解しています。

日本では、まだまだ馴染みのない単語ですが、簡単にいうと「ありのままの自分を愛すること」になります。太っていても良い。瘦せていても良い。自らが肯定できる要素である限り、誰からも自分の外見について否定されるべきではないというのが基本的な考え方です。

本作品は、瘦せていることが美しさの基準とされていたファッション界を舞台にしています。最近では流れも変わってきていますが、インスタグラムにはたくさんのダイエット記事が溢れており、まだまだ「美=瘦せていること」という価値観は根深いものと思います。この作品が美しさには多様性があることを訴えることは、自らの外見に悩む多くの人の助けになることでしょう。

ボディポジティブ。非常に深いテーマなので、本ブログでもいつか取り上げてみます(笑)

 

簡単に書きましたが、たくさんの魅力に溢れている『The Bold Type』。ぜひ、暇つぶしがてら、ご覧ください。